W201 オートマチックトランスミッションの分解 2003.5.19

まず最初にATを貸してくださった方、運んで下さった方々に感謝します。

壊れると高くつくAT。しかしコンディションがいいものは驚くほど滑らかな変速をし、高い工作精度を感じます。
Mercedes Benz自社製。伝達効率の良さは他社のATと比べエンジンブレーキの効きがいいことでも解ります。
また遊星歯車機構とはどんな物か?などなど・・興味は尽きません。
全部理解はできないとしても ヒョットしたら分解、組み立てはできるかもしれません。 などど日ごろ思っていましたが ある方から勉強用に1台ありとのこと・・。よろこんでお借りしました。

Mercedes Benz 1992年式190E 2.5-16 D車 走行距離18万kmから外した物で不具合なく走っていたとのことです。
この部品番号 201 270 43 01  722-417 とあります。

参考文献 オートメカニック 臨時増刊 「クルマいじりのための自動車工学」 内外出版社
       #この本で 機械式AT プラネタリーギア機構、油圧制御方法など予習してから挑戦しました。

1 AT本体
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コンバータ、バルブボディは取り外した状態です。

フィルターを外します。

3 ボルト緩めて インターミディエートプレートとボトムカバー一体で外れます。
4 油圧経路、ブレーキバンドの一部が見えます。
5 インターミディエートプレートとボトムカバー
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コンバーターが外された状態の前側

9本のボルトを外し手前に引き抜く

矢印はギアーポンプ AT内部の作動油圧を発生

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外れたギアーポンプ

SSTがあれば矢印方向にリングを縮めスナップリング(Cリング)を外すとギアーポンプ本体が現れます。オイル漏れの場合ここを外しOリング交換

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さらに奥に付いている多板クラッチ(K−1)を引き抜く矢印のCリング(ピストンリングの大きな物のような形)をドライバーでこじれば多板クラッチが取り出せます。

サンギアはプラネタリーギア機構の中心に付いています。

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K−1 クラッチの外周にリバースクラッチ(これも多板)があります。

摩擦材がボロボロに剥がれ 全然残っていない部分もありました。

ここまでは順調に分解が進んだのですが・・・センターのシャフトを引き抜こうとしても出てきません。やはりブレーキバンドも外さないとダメなようです。

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じっくり考えてから、ミッションケース リヤ側からアクセスしてみます。

矢印のナットはインパクトがないと緩みません。(すでに緩めてありました)

ナットを外しジョイントディスクと繋がる部品を外します。

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リヤーケース固定しているボルトを緩め 引っ張れば外れました。

ここは液体パッキン塗布です。

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ここで見えるのはPポジションのロック機構です。かなり頑丈な作り。

黄色い樹脂のヘリカルギアーはスピードメーター用

これも引っ張れば抜けます。

13 ガバナー部分の分解。Cリングを外す。
14 キャップを取ると遠心式のガバナーが見えます。
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スナップリングプライヤーでリングを縮め。

 

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外れたガバナー(本来はここにヘリカルギアーが付いています)

遠心力で中央のピストンを押し油圧経路の変更をします(車速に応じ)

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ガバナー反対側 M6ボルト4本外し開けてみるとギアーポンプがあります。

プロペラーシャフト(出力軸)の回転数(車速)に比例します。

W124 94年E280にはこのセカンダリーポンプが付いていないので、省略されたようです。

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ブレーキバンドの分解@はかなり強いスプリングが内蔵されていて危険が伴うので冶具が必要です。

Aは手の力で押し込んで止めてあるCリングが簡単に外れました。

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冶具の製作風景。

アングルを切って溶接しました。

 

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Aはオイルパン固定用穴に冶具を取り付け、

Bはブレーキのピストンを押すTOOLでキャップを少し押し込み

CのCリングを外しました。

21 Cリングを外したら、ゆっくりと緩めます。
22 中の2重になったスプリングを取り出します。
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2つのブレーキバンドのカバーが外れました。

矢印はPブレーキの部品。これを外すと奥にM6のボルト5本を外します。

24 取り出したブレーキバンドなど
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23の画像、5本のボルトを外した後 スナップリングプライヤーでCリングを外すとシャフトが抜けました。

ここが一番苦労しました。抜き方が解らなかったので・・。

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抜けたシャフト(^^)

ブレーキバンドで締め付けられる外周は変色しています。

左側はプラネタリーギアのリングギアとピオンキャリヤー

このATはピニオンギアが4個あるタイプです。

 

27 ケース内部
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全部の部品をならべて・・。

それにしても200PS以上のパワーを伝え、変速するのにコンパクトさに驚きました。

29 シャフト後ろ側にある多板クラッチ(K−2)を外すにはこのCリングを外し引き抜きます。
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これは(K−1)クラッチ

矢印のところをこじってCリング外します。

31 分解した多板クラッチ
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厚さの計測。新品2.15mm

これは2.05mmまで減っています。

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忘れないうちに組み立てをしました。パーツが余ることもなく無事終了。

あと2〜3回やれば自信がつくカモしれません。(笑)

一番大変なのは、これを車体から下ろすことですね。 約40kgほどでしょうか。
また重要なバルブボディも未経験なのでこれからの課題です。

分解、組み立てを終わって・・。

機械部分、歯車などの工作精度の高さに驚きました。

20万km走行でも多板クラッチ、などの消耗品以外劣化する所もなく耐久性は極めて高いと思います。

良いコンディションを維持するには早めのATFとフィルター交換が必要であることもわかりました。

貴重な経験のチャンスを提供していただいた方に感謝します。