W124 E320 冷間始動不良 (1995年式 走行距離28000km)

7月に入ってから朝のエンジン始動がうまくいかずセルを回す回数が5〜10回にもなるという症状。 しかし一度かかってしまえば調子は良く燃費も加速も問題ないとのこと。


 
 という訳で七月上旬にE320入庫


 まず燃料の圧力維持が問題なのかと疑い「燃圧計」借りて作業を始めましたがアダプターが合わず使えません。仕方ないので燃料プレッシャーゲギュレーターを自分のE280とスワップして翌日様子を見ました。(サービスポートのネジは1/4フレアでした)

上画像右にあるのが燃料圧力測定用サービスポートです。中はバルブコア(ムシ)がねじ込んであって先端を押すとわずかな燃料と共に圧力を抜くことが出来ます。

スナップリングプライヤー(穴用)でクリップを外し燃料プレッシャーゲギュレーター(品番000 078 15 89)を取り出しました。Oリングがきつく簡単には抜けませんので場合によってはウエスをかましてプライヤーで引き抜く必要があります。

(燃料プレッシャーゲギュレーター)の役目:燃料ポンプから送られてきたフュエルデストルビューター内部ガソリンの圧力を一定に保ち燃料噴射の精度を保証し余った燃料をタンクに戻すということをしています。ここでエンジン停止後の燃圧を保持し次の始動でも規定の圧力で燃料を供給できるようになっています。


翌朝、冷間始動をしてみたらやや長めのクランキング後一回で始動しました。しかし「かかった瞬間」の排気音が「かぶったような燃料が濃い」感じでした。


更に次の日、IGキーONで燃料ポンプが作動する音を聞きOFFを3回ほど繰り返し燃料の圧力を高めてからセルを回しました。
すると「吸い込んだような感じ」で10回めのセルでようやく始動。燃料が濃すぎる感じです。

うーむ。燃料プレッシャーゲギュレーターはシロかもしれません。

ここの時点で燃圧計と排ガステスターがあれば燃料が濃くてダメなのか足りなくてかかりにくいのか判断できるのに・・・。
やっぱり計測機器は必要ですね。


これ以上テスト機器がないと調べようがないので専用の診断機で見ることにしました。

夕方預け翌朝の冷間始動をテストします。

気温29℃と蒸し暑い朝・・・診断機の「コールドスタートテスト」でIGをONの位置(セルを回す前の状態)ダイアグ端子8番HFMコントロールユニット"の実測値をスキャン。

読み取ったデーターを見ると・・・・

エンジンスタート温度
29℃
水温
29℃
アフタースタートエンリッチメント
ON
吸気温度
−1℃
アイドルコンタクト
ON

明らかに吸気温度が異常の数値・・・!


 ○印が吸気温度センサーです。コネクターを抜いてから引っ張れば外れました。


 吸気温度センサー000 542 28 18 定価\4390 (95年モデルは94年と形状が違い互換性ありません)

画像、上:外したもの   下 新品(断線に対し対策してあるような形状でした)

気温29℃の時−1℃と表示が出たセンサーをテスターで調べるとコネクターの所2ピン間は抵抗値0 しかしサーミスタの先端部分を計ると正常な抵抗値。内部の断線が原因でHFMコントロールユニットが 「今日は寒いので燃料を濃くしよう!」と判断していたのが「冷間始動不良の原因」でした。

気温が20℃以下の時は、燃調がリッチでもどうにか始動していたが さすがに30℃近くの気温で−1℃の濃さではかかりにくくなったということで所有者の話とすべて一致しました。

サーミスタについて:温度変化により電気的な抵抗値が変化する半導体。自動車用はNCTという温度が高くなると抵抗値が減っていくタイプが使われています。
 今回問題となった吸気温度センサーのサーミスタは+25℃で5000Ω +10℃で9950Ωと変化するタイプでウオポンに付いているLLC温度センサーと同じタイプです。他には外気温時計やエアコンの温度制御などに多く使われています。


新しい温度センサー入手してから取り付け診断機で見ると下記のようになり一晩置いてテストした冷間始動はきわめて自然に素早いスタートとなりました。
始動後の20秒間ファーストアイドルやエアーポンプ作動、点火系統のミスファイアなど全て異常なしとなりました。

エンジンスタート温度
29℃
水温
29℃
アフタースタートエンリッチメント
ON
吸気温度
29℃
アイドルコンタクト
ON

このE320は運転席のシートまるで使ってなかったような状態。テカリも無くシワもほんの少しだけ。
この後ETCとリモコンドアロック取り付け納車しました。
走行28000kmの極上ワンオーナー車ですからいつまでも大切に・・・。

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